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義隆がお気に入りの作家の小説を読んでいるうちに、時計の短針は限りなく七の位置へと近づいていた。
時間としては、あと十分の余裕があったが、義隆は早めに降りる事にする。
『暖の間』は玄関を入ってすぐのところにあり、真ん中に大きな囲炉裏のある和室だ。
部屋から出て階段を下りている途中、カタカタと木で木を叩くような音が聞こえた。
どうやら廊下に撫子が居るようだ。
階下へと向かう足を早くしようとした時である。
「お、新顔?」
背後から男の低い声が義隆を呼び止めた。
振り返れば、そこには眼鏡をかけた男性が立っている。
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