第二章

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「あんまり色目使わないほうがいいよ~?」  一体なんの事だと顔をしかめれば、寛太はからかうような声で続けた。 「いくら可愛くても、所詮は人形だしね」  人形と言われ脳裏に浮かぶのは撫子しか居ない。 横を見れば、訳知り顔の寛太が挑戦的な目でこちらを見ている。 義隆は対抗するように返した。 「綺麗なものを綺麗だと思って何が悪いんですか?」  綺麗な人とは話したいと思うし、見ていたいとも思う。 それは人間にとって当たり前の感覚だろう。 寛太は興味深そうに義隆を見つめた。 そしてすぐに満面の笑みを浮べる。 「うん、そりゃあそうだね」 キュッと下がった目尻には、先ほど抱いた不快感を忘れさせる愛嬌があった。 なんと憎めない男だろう。
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