第二章

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「義隆くんだっけ? 君、いいね。面白いよ」 ――面白いって、どういう意味でですか。  などと初対面の人に聞ける勇気は常識人である義隆には無い。 先ほどは意地になり反発してしまったが、本来の義隆は他者と対立する事を良しとしなかった。 食ってかかれば周りの大人達は、両親を亡くしたショックにより精神が不安定なのだ、という見当違いな結果に落ち着くからだ。 義隆はそれがどうしても嫌だった。  返答に逡巡していると、寛太は思い出したように口を開いた。 「こんなところで話し込むのもアレだし『暖の間』行かない?」  とんとんと寛太の背中が先に下がって行く。 義隆は「え、あ、……はい」と心ここにあらずな返答だ。
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