第二章

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 目が覚めたのは、部屋の前を撫子が通り過ぎた音がしたからだ。 流石に襖一枚では、カタリカタリと木の触れ合う音がよく響く。 そうでなくとも、人が通るだけで床を踏む音が聞こえるのだから、プライバシーも何もあったものではない。  時計を見れば短針は七時を知らせていた。 朝食は八時からなので、あと一時間は余裕がある。 もう半刻寝ようとも思ったが、なんとなく、起きてみるのも良いかな、と義隆は背中を反らし思い切り身体を伸ばした。  頭も目も冴えているので問題は無い。 立ち上がった義隆は、灰色のスウェットを脱ぎ捨て、ジーパンへと手を伸ばした。
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