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「目が覚めちゃったんです」
義隆は庭へ降りた。
沓脱ぎ石にあった下駄を履き、ぎゃりぎゃりと玉砂利の中を進む。
花壇の中に、一際目を引く花を見つけた。
紫色が沢山集まったその一角は、庭の緑に豪華なアクセントを加えている。
「素敵な花よね、妖精のお姫様みたいで。黒種草(くろたねそう)っていうのよ」
佳代の言葉に、言い得て妙だと感心した。
大きなティアラを被り、紫のひらひらとしたドレスを身に纏った小さな妖精のお姫様。
下から伸びる手足が多いのが難点である。
――手足の多い妖精?
こつりと何かが胸の奥に引っかかった。
「黒種草の花言葉って知ってる?」
嬉しそうな佳代の言葉に、義隆は顔を上げた。
ふるふると頭を振れば、佳代はうっとりと目を細める。
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