第二章

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「目が覚めちゃったんです」  義隆は庭へ降りた。 沓脱ぎ石にあった下駄を履き、ぎゃりぎゃりと玉砂利の中を進む。  花壇の中に、一際目を引く花を見つけた。 紫色が沢山集まったその一角は、庭の緑に豪華なアクセントを加えている。 「素敵な花よね、妖精のお姫様みたいで。黒種草(くろたねそう)っていうのよ」  佳代の言葉に、言い得て妙だと感心した。 大きなティアラを被り、紫のひらひらとしたドレスを身に纏った小さな妖精のお姫様。 下から伸びる手足が多いのが難点である。 ――手足の多い妖精?  こつりと何かが胸の奥に引っかかった。 「黒種草の花言葉って知ってる?」  嬉しそうな佳代の言葉に、義隆は顔を上げた。 ふるふると頭を振れば、佳代はうっとりと目を細める。
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