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「駄目! これに触らないで!」
甲高い声が響いた。
そうでなくとも静かな宿屋である、三森の声は宿屋中に聞こえた事だろう。
「失礼いたしました。では、お部屋へご案内させていただきます。三森様のお部屋は『月見草の間』になります。こちらへどうぞ」
対する撫子は全くの無感情である。
まる一日が過ぎたが、未だに撫子の柔和な声以外を聞いた事がない。
そうなればまるで感情がこもっていないように聞こえてくるので不思議である。
ふと、撫子と三森が『床の間』と『暖の間』のあいだにある廊下を通って行く。
廊下側の襖は開いていたので、義隆はようやく三森の姿を確認する事が出来た。
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