ため息

1/8
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

ため息

世の中にはいくつもの恋の形がある。 それは、僕たちにはどうすることもできない世の中の真理であり、決して曲げることのできない事実でもある。 誰かが誰かに恋をする瞬間など、どれ一つとして同じものなど存在するはずもないのだし、その内に秘められた思いもまた、同じものなど存在しえない。 誰かと誰かが偶然にも同じ人を好きになったとしても、そこに存在する感情や考え方は決して同じではないだろう。 だからこそ、同じ恋と名のつくものであっても、それは楽しいものばかりではなく、辛いものや苦しいものも存在する。 恋をするのであれば、楽しい恋の方がいい、誰だってそう思うに違いない。 それは、僕にしてみたところで同じことだ。 楽しく心弾むような恋がしたいと、僕も心の底から願っている。 だけど、どうしてなのだろうか。 僕の恋は、いつも辛くて苦しいものばかりだ。 この人を好きにならなければ、こんなに苦しむことなどなかっただろうにと、何度思ったことかわからない。 恋をすることに怯えていた時期すらある。 それでも恋愛感情はどこからともなく僕の前に現れて、僕の心を擽り、僕を恋へと導いてゆき、結果として僕を苦しめるのだ。 そして、僕はいま、恋をしている。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!