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時「…ん…。」
髪に触れるそれは"ひら"
頬を撫でる様に触れるそれは"甲"
鼻を掠め、唇をなぞるそれは"指"
教えられる様に、順番に認識し、俺に触れる
ドクンドクンと音が鳴り
芳醇で、濃くて、甘い血の匂いの塊は
"人の手"という答えが出る。
時「……だ、れ…?」
人の手、と認識したそれから、目の前の黒い影は"人"だと認識し
躯を引き、朦朧とする意識を向け、問い掛ける。
?「……。それより、腹減ってるんじゃねぇのか。」
俺の問いには答えず、そう言って謎の人物は、俺の鼻に手首を押し付けた。
時「…ん…む…、…はあ。」
聞こえる
脈打つ動脈の音
感じる
心臓から送り出され、動脈を流れる血の気配
強く香る
濃くて、香り高くて、甘い血の匂い。
全てに刺激される本能、衝動。
酔う、ってこういう事なのかもしれないと
どこか他人事の様に感じながら、目の前の手首に口付け、舌を這わせ
──プツッ
?「!」
手首を掴み、浅く牙を立てた。
?「…っ、いきなりかよ…。」
肉を割り、食い破って牙を穿つ感覚に高揚感を覚え
異物に反応した、相手の心臓の不整脈に興奮する。
謎の人物の呟きに反応する余裕なんてない。
ジワジワと手首から滲み出る血。
薄い肌に吸い付けば、滲み出た血が舌に乗って
その瞬間、不思議な酩酊感に襲われ、朦朧とする意識が浮遊した。
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