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「では、行ってきます」
場所は変わり、黒斗たちは現在、駅に隣接するバスターミナルに赴いていた。カグラに呼び出されたエレナと、組織に帰るシーナを見送るためだ。
二人は既にバスへ乗り込んでおり、窓を開いて黒斗たちを見下ろすような形で、しばしの別れを惜しんでいる。
「おう。気ぃつけてな」
「承知している。貴方こそ魔導書籍を忘れないように」
「任せとけって」
エレナたちが聖女騎士団に行っている間に、魔導書籍を入手しておく手はずとなっている。
現在の時刻は午後一八時半を廻っており、これから魔導書籍を買う分の資金を銀行口座から引き出したり、骨董品店へ行ったりするには、少々時間が足りない。
本日のところは見送りだけ済ませ、魔導書籍の方は明日にしたほうが良さそうだ。
バスのエアーが抜ける音がした。ドアが閉じて、エンジンの回転数が増していた。
ゆっくりと、バスがタイヤを動かし始め、比例して距離が開く。
「んじゃ、いってらっしゃい」
と、黒斗は片手を高く横に振る。遠くなっても見えるように、窓からこちらを見る少女に向けて。
これはお別れではない。
エレナは召集されただけなのだから、すぐに戻ってくるのだ。
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