売命

3/4
前へ
/97ページ
次へ
横山は8月中旬に、家族で海へと出かけた。 泳ぎに自信のある横山は、その時にブイに手が触れる位置で泳いでいた。 かなり深いため、周りで泳いでいる者は居なかった。 しばらく泳いでいると、横山は突然何者かに足を掴まれた。 慌てて振りほどこうしたが、掴んでいるのは1人ではなかった。 横山が水中で見た者達は、一目で「死者」と分かる姿だった。 腐敗し、海水でブクブクに膨れた体を見て、「生者」として見る者は居ないだろう。 そう、海で死んだ者が横山を引き込もうとしていたのだ。 普通なら、この状態の横山が助かる筈がなかった。 だが、横山は「死者」達と取引をしたために助かったと言うのだ。 縦川はその取引の内容が気になったが、休憩時間が終わったために聞くことが出来なかった。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

108人が本棚に入れています
本棚に追加