First.

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やがて見えてくる異常に大きな正門を振り仰いでいると、少し気が遠くなる。 精緻な細工が施されたその門は観光名所になるほど高名だ。 (たかが門をこんなにごてごて飾り立てて…我が家なんかガラス窓の一枚にも汲々としてるのに…) 校舎や道、花壇、中庭その他様々な施設に関しても門と同じようにどこのお城?!と言うような装飾がされていて、100人見たら恐らく100人共に認めるであろう「ボロ屋敷」に暮らす美鈴からすればうらやましい限りなのである。 そして、門を抜けると同時に目にするのは… 次々と門をくぐり抜けていく黒塗りのリムジン――恐らく億単位の外国車――、 飛びかう「お嬢様、到着いたしました」「お坊ちゃま、学校でございます」といったような言葉、 車から優雅な挙措で降りる「お嬢様」に「お坊ちゃま」…。
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