13人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
「美鈴ー
また屋根崩れてるよ??」
庭から聞こえる淳の声に美鈴ははっとした。
広いだけが取り柄のこの家では、雨が降るたびに新しい雨漏りが発見され、瓦や壁は日常茶飯事のように崩れる。
修繕費も半端ではなく、高卒で就職した淳の給料や、なけなしの美鈴のバイト代は見る見る内に消えていくのだった。
「あーっもうっ!!あちこち崩れるばっかで直しきれないわよぉっ
ごめん、お兄ちゃん直しといて!!わたし今日入学式だからっ」
ボール紙で所々補強してある窓から、淳は顔を覗かせた。
「あれ??
今日だっけ入学式。
…うわっ高そうな制服
それも奨学金で出るのか??」
なぜ貧乏を絵に書いたかのような雨宮家の娘が、超絶お坊ちゃまお嬢様学校に入れたのか。
それは一重に美鈴が奨学生だからである。
「そうっ
かわいいでしょ??
おまけに毎日のランチも夏の合宿も修学旅行のフランスもぜーんぶタダ!!」
「全くずる賢いとはこのことだな…まぁ俺は成績不優秀だったから夢のまた夢だったけど…」
乾いた笑い声をあげる兄に、美鈴は呆れたように肩をすくめた。
我が兄ながらなかなか顔は良いと思うのだが、頭の方はさっぱりらしい。
最初のコメントを投稿しよう!