気付いてたのかもしれない

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井上をなんとか起こし、タクシーを降りる 肩を貸しながらでもしなければ歩いていけないほど酔っているはずの井上は、まだ目が覚めきっていないのか肩を掴んだまま下を向いている 「…いのーえ、歩けるか?」 「…おん」 そう言うと井上は自分の肩から手を離し、自分一人で立とうとする いやいやいや無理でしょ 今立ってるだけやのにフラッフラですやん 「はぁー…ほらいのーえさん、おんぶしますから背中乗って下さい」 「ウーン…」 倒れこむように井上が背中に乗ってきた 「(うぅ…やっぱり重いな)」 いのーえさんの部屋が1階でよかったと改めて思う 井上をおぶっていると酒の匂いの他、井上の髪の毛が揺れる度にふわっと香るシャンプーの匂いが鼻を掠める シャンプーの香りに何故かドキドキ感を覚えている自分に、気のせいだと言い聞かせ先を急ぐ 扉の前まで行き、いのーえさんが僕にいつでも遊びに来れるようにとプレゼントしてくれた合鍵で鍵を開ける まぁいのーえが酔いつぶれた時しか今は使っていないのだが 「ほらいのーえさん着きましたよ!」 「ン…(ヨロヨロ)」 「あーもうほら一緒に行きますよ」 「んー…」 よろよろないのーえさんをなんとか寝室まで連れていき、そのままベッドへと誘導し座らせる 「なんか飲みますか?」 「…おん」 まだ眠いのだろう 井上は下を向いたまま頷く 近くの自販機で買っておいたミネラルウォーターを取り出す 「はい、いのーえさん」 井上に渡す前にペットボトルのキャップを外し、すぐに飲める状態にしておく 井上は声がした方にゆっくりと手を伸ばしていく 「ん…ありがと……西野」 .
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