SS―スコープの先に

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ビルの屋上に身体を寝かせ、スコープを覗く。 そして違うビルの6階に倍率を合わせ、椅子に持たれ掛かる男の頭の少し上にレティクルの中心を合わせる。 そして一呼吸おき引き金に掛ける指に力を込めた。 パァンと弾ける音と薬莢の落ちる金属音に火薬の匂い。スコープの向こうでは世話しなく動く男が数人、血塗れの中年。 今回の仕事もこれで終わり。 俺はライフルの分解に取り掛かった。 いつからこうやってスコープを覗き、殺しをしてきたかはもう忘れた。 産まれてからやってたのかも知れないし、つい最近かも知れない。 つい最近だとしたら俺は痴呆症の疑いがあるな……。 ライフルの分解を終えた俺はカバンに詰め、薬莢を拾いビルの屋上を立ち去った。 今から彼女とのデートだ。 クリスマスデート……。あぁ、今日はクリスマスだったか……。 確か待ち合わせは―――― ブーブーブー 「はいこちらJOKER」 『奴はどうした?』 「確かに消しました。 問題はありません」 『報酬金はいつもの口座に振り込む。また頼む』 「金さえ払ってもらえれば」 そう吐き捨てた後に電話を切る。 あぁ、もう待ち合わせ場所か……。 そこは有名な高級レストランだった。 中に入るともう彼女はそこに居た。 それから他愛もない話が続き、楽しいと思える一時が過ぎた。 そこから記憶が無い。 朝目が覚めるとホテルにいて、テーブルの上には彼女からの手紙があった。 ふぅ。珈琲を入れて一息つく。 ゆっくり出来る時間はいつも朝だけだ。 だが、今日は一つの電話に邪魔をされた。 忌々しいが、仕事の話。 また殺しの依頼だった。
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