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「はい、JOKERだが」
『依頼だ。 今回はある組の娘を消して欲しい』
またか……、最近組関係の依頼が多い……。
「で、名前は?」
『あぁ、不知火梨華という女だ』
「……は?」
『写真などはまたいつものアドレスに送っておく。 明日までには消してくれ。 報酬金は1億払おう。 では』
一方的にブツリと切れる電話。
俺はさっき聞いた名前に覚えがあった。
昨日も会っていた人物と同名。
2年前から付き合っている人物と同名。
不知火梨華、それは俺の彼女の名……。
いや、偶然同名なだけかも知れない。
そう思い、俺はPCの電源を入れた。
新着メールが1件、添付画像には――――
最悪の展開だ。
添付されたその画像に写っていたのは紛れも無い俺の彼女、不知火梨華だった。
梨華は組の事なんて……。
いや、そんな事は最早どうでも良い。
今は仕事をまっとうするだけ。
殺しの仕事は何が合っても依頼があれば殺す。
それが肉親であっても……、兄妹であっても……、彼女であっても……。
そう割り切って仕事をしていた筈なのに、なのに、身体は動こうとしない。
指一本たりとも動かない。
ふと腕時計が目に入り時間を見ると、午後4時。
もうあまり時間が無かった。
こんな事なら、こんな事になるのなら殺しなんて…………、殺しなんて辞めれば良かった…………。
だが後悔したからといって彼女がこれからも生きる訳はない。
ここで俺が殺さなくても、他の殺し屋に殺られるだろう。
ならいっそ、この手で――――
そう考えると身体がふと軽くなった。
今からなら、まだ時間はある。
俺は携帯を取り出し、彼女にメールを打った。
『今日の6時に○○駅前の噴水で待っていてくれないか? 渡したいものがあるんだ』
こんな文字を、文章打つ俺が気持ち悪い。
だけど俺も決めた事は決めたんだ。
今更止まる事は出来ない。
俺はホテルを飛び出した。
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