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チェックアウトを済ませ、自分の部屋に帰り仕事道具の整備を軽く済ませる。
相棒のスナイパーライフルにハンドガン一丁。
それをカバンに詰め、噴水が見えるであろうビルをGPSで探した。
そういや駅前は人が大勢居る、その中で彼女を殺すとなると野次馬……。
俺の身体は勝手に携帯電話のキーを押し、警察署へ電話していた。
『はい、こちら○○警察署本部』
「――今日の午後6時、一人の女性が殺されます。彼女の処理をお願いします」
GPSを繋ぎ直し、一つの雑居ビルを見つけた。噴水から北に一直線上に一つの8階建ての雑居ビル。
今の時間は5時10分、今から向かっても5時30分には着くだろう。
そう考え、家を出た。
案の定、雑居ビルの屋上に着いたのが5時35分。
カチャカチャとライフルを組み立てる。
スコープの倍率も調整する。
しかしさっきの電話で警察は動いてくれるのだろうか……。
そんな心配が頭をよぎる。
スコープを覗き噴水を見てみると、彼女はもうそこにいた。
噴水の渕に座り、しきりに携帯を確認する彼女。
クソッ、手が震える。
まともに銃を握れない。
スコープで回りを確認して気を紛らわそうとして回りを見たら、警官が5、6人。 パトカーが3台。
良かった、ちゃんと動いてくれたんだ。
その時、携帯のアラームが鳴った。
6時の合図。
携帯を取り出しアラームを止める。
そのままメール画面を開き、彼女にメールを送る。
感謝の文と謝罪の文を書きこんで送信ボタンを押した。
もうこれが最後、俺が出来る、彼氏である俺が出来る最後の行為。
すまない梨華……。
スコープを覗くと、メールを確認しているであろう彼女が見えた。
頭にレティクルの中心を合わせる。
スコープの先が、彼女が涙で見えない…………。
だけど俺がやらないと――――
涙を拭き、もう一応スコープを覗く。
するとふいに彼女がこちらを向いた。
見えるはずがないのに……。
そしてにこりと微笑んでくれた。
その瞬間俺は引き金を引いた。
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