始まりはここから

3/10
1292人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
声のした方を向くと、そこには小柄な少女がベッドに座ってこちらを見ていた。 年齢は俺と同じぐらいだろうか。 ちなみに俺は小学三年生だ。 「お………お兄ちゃんがねぇ、寝てろって怒るのー」 わんわん泣きながら真子は言う。 その少女は手招きをした。 「こっちにおいで?」 天使のような柔らかい微笑み。 真子はすっと泣き止み、ふらふらと少女のもとへ向かった。 「真子ちゃん………だったよね?」 「うん」 少女はにっこり笑って真子の頭を撫でた。 「怒るなんてひどいねー?」 少女は俺をちらりと見る。 「あのなー、俺は……!」 なんだか自分が悪者になったようで気に食わず、俺は抗議の声を上げようとした。 「でもさ、お兄ちゃんは真子ちゃんを心配してるんだよ」 その言葉を聞いて、俺の沸いてきた怒りは次第に薄れる。 「でも、怒鳴ってきたもん…!」 「それはね、真子ちゃんが大好きだからなんだよ?」 「……………え?」 きょとんとして首を傾げる真子。 少女はクスッと笑った。 「真子ちゃん元気でいて欲しいから、怒るんだよ。 病気が悪くなって欲しくないから」 真子はしばらく黙ったまま俯くと、顔を上げてこちらに走って来た。 「おにーちゃん……ごめんね。 真子、悪い子……。ちゃんと寝てなかった…」
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!