プロローグ

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空獣(エア)と呼ばれる生物が居る 羽根の生えた四足獣のような姿。 体長は個体にもよるが、平均すれば尾まで入れて十メートルほど 毛も鱗もない、岩のように硬質化した皮膚で全身を覆われている 敵意を剥き出しした吼え声は雷霆の如く大気を震わせる 鋭利な爪を、強靭な筋力を、堅牢な皮膚を持ち、ヒトすらも牙にかけんとする空の支配者 大地に嫌われた怪物、それが空獣である 天敵である彼らを人間もただ殺されるだけではなかった 蒼穹園騎士団と呼ばれる組織がある 王国・蒼穹園が保有する空獣対策の軍である そんな蒼穹園騎士団で誰もが知っていると言ってもいい人物が一人居る 空獣の死骸を内部に内包し、人を空へと運ぶ天駆機関 その中でも、もっとも使いこなす事が難しいとされる甲冑型天駆機関を纏い、空を泳ぐ姿から魔女と呼ばれ、齢十七にして蒼穹園騎士団屈指の実力者として謳われる若き天才 鷹崎駆真少尉 決して笑わず、決して泣かず、決して怒らないと言われて、『鷹崎駆真を笑わせた者には賞金二万苑』なんて冗談染みた文章が蒼穹園騎士団の騎士達の間に出回ったことすらあった そんな彼女の唯一と言っても良い弱点を知る者はそうは居ない そして、彼女が勇者であり、魔人の主であり、神であり、魔王である、なんてチート染みた存在であることなどもっと知らないだろう しかし、そんな自分に圧し掛かる称号も大した物ではない むしろ今は都合が良い物でしかないのだ 最愛の姪っ子、鷹崎在紗を助ける為に必要なものでしかない 少女、在紗は特殊な存在であった 父は天才天駆機関技師である鷹崎修吾 母は空獣を束ねる空の〈女王〉であるフューゼシカ・アシュ・クーレィン。人間としての名を鷹崎冬香 人間と空獣のハーフ、正しく特異な存在である 〈女王〉の血筋の者は空獣を自然に呼び寄せてしまう特性がある そのため、在紗がこのまま首都に留まれば蒼穹園は壊滅するであろう そうしない為に在紗を連れて行く そう告げた在紗の母、冬香と駆真が戦闘したのは最近のことだ その結果、駆真に在紗の〈女王〉の特性を抑える方法を探す期間が半年だけ与えられた そして、駆真は自らの仲間にそれぞれ違うアプローチに違う方法で探させた
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