プロローグ

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私なら気が変になりそうなんですが、カレルはのんきに離陸寸前でトイレにいくといいだしてCAを困らせていたようです。 思えば、もうすでにカレルはこの時点で、運命の歯車が狂っていました。この乗り合わせたガラの悪い観光客が何者かは、あえてこの時点では書くこともないでしょう。お茶の間のニュースにも彼らはしょっちゅう話題になりましたから。 当然、“彼ら"にとっては、カレルの存在は異質でした。ですが、このまま計画は決行されたようです。カレルが異変に気づいたのは、CAが銃を突きつけられ、手を後ろに組まされたときです。 「ハイジャック‥‥?」 身の危険を感じたカレルは、とっさの機転で私にプレゼントする予定だった空のデバイスを飲み込んでしまったそうです。ただ、一部始終を見られたようで、厳つい顔の銃をもった男に詰め寄られてしまいました。 「貴様、何を飲んだ!」 すぐにカレルは銃を突きつけられ、客室から貨物室に移動されました。思えばあの場でカレルを殺さなかったのは、いずれ仲間に引き込むためだったのかもしれません。
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