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「じゃあなー」
奏の演奏を聴いた後、
俺たちはライブの時の待ち合わせ時間等を話し、解散した。
それにしても凄かったなあ。
身がギュッとしまったような感覚がまだ残っている。
また聴きたいなっ!
そんなことを考えながら俺は家へと足を進めた。
そしてあっという間に自宅へ着いた。
「ただいまんぼうー…っと」
俺は意味の分からない語尾をつけた帰宅の挨拶を言いながら、勢い良くドア開けた。
「おー、おかえり。 太郎」
「誰だそいつは。
隠し子?親父の隠し子なの?」
俺と同様に意味の分からん台詞を吐いたのは俺の親父である、秋谷穏智(あきたにおんち)。
名前に゙穏やか″なんて文字が入っちゃいるが、諸君も分かる通りとんだおちゃらけ親父である。
因みにおんちと読むが音痴ではない。
むしろ案外歌は上手い。
まあ学生時代は散々弄られたらしいが、そんなの俺の知ったこっちゃない。
そんなことを考えながら哀れみの目を親父に向けていると
「なんだ音弥その目は…俺をおちょくってんのか? そんなにおちょくるとなあ…
お前をおちょこにするぞ!!」
「………」
うん。
さっぱり意味が分からん。
てかなんだおちょこにするぞって。
どこをどんな風に?酔ってるの?
ねえ親父酔ってるの?
確かに顔が少し赤いような気はするけどさあ…
帰って三分で息子にここまでツッコませる親父なかなかいないよ?
「んー…とりあえずおかえりな。 音弥」
「う、うん。 ただいま」
いや、遅えよ。
限りなく遅えよ。
でも、俺がたまに発する意味不明な言動は親父譲りなのかも…
そう思いたくないけどそうなのかも…
があああ。
嫌だあああ。
頭を掻きむしりたくなる思いに苛まれながらも、俺は階段を上り、二階にある自室へ向かった。
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