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「じいちゃん何やってんの?」
「ふむ?何だ音弥か」
じいちゃんは少し安心した様子をみせる。
まさか母ちゃんにでも怒られると思ったのか?
いやそれよりも
「だから、何やってんの?」
「何って…ベースじゃぞ?」
じいちゃんはさも当たり前のように答える。
いやいや待てよ。
そんなのは分かってるよ。
「いやいや何で弾いてるのよ?」
「いやあ、昔を思い出すのう」
じいちゃんは俺の質問を無視した答えを言ってきた。
「昔はバンドを組んでたんじゃよ。 わしも。 剛腕ベーシスト弦三として有名だったものじゃ」
「へえ…」
「まあ、ベース弦は四本なんじゃがなっ!」
じいちゃんは意味の分からないギャグを言って自分で爆笑している。
意外だった。
じいちゃんがバンド組んでたなんて。
「今日、奏君と話しててなんか弾きたくなってきてのう」
「なるほどね。 通りで廊下まで重低音が響いてた訳だ」
「本当か!!ヤバいのうそれは…バレたら…」
じいちゃんは苦い顔を浮かべた。
因みに、さっき本人も言ってたけどじいちゃんの名前は秋谷弦三(あきたにげんぞう)。
元剛腕ベーシストらしい。
「んじゃ、風呂入ってくるわ。 ついでに母ちゃんにじいちゃんがベース弾いてるって言っとく」
「この鬼畜ぅぅぅ。老人から楽しみを奪う気かぁぁ」
うるせえ。
孫に鬼畜って平気で言える祖父に言われたくないわ。
昼間の仕返しだ。
そして、俺はじいちゃんの悲鳴を聞きながら風呂に入った。
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