相棒

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「ふう…全く」 「すまんのう…音弥」 俺は30分間このアホじじいに説教していた。 まあ怒られて当然だなこれは。 年功序列とか言ってられない。 「あのー…俺はどうすれば?」 「あっヤベっ」 じいちゃんへの説教ですっかり忘れていた。 「えーと…確か」 「村山奏っす」 「そうそう、奏くんだ。 申し訳ないことしたね。 家のじいちゃんが…もう」 それを聞いたじいちゃんは再びしょんぼりした。 「いやいや、元はと言えば俺が悪いんだし…大丈夫っすよ」 うん。 奏くんはなかなか良いやつのようだ。 俺が沖縄に住んでいたとしたら是非友達になりたいと思う。 「ということで、練習があるんで俺は失礼します」 そう言うと奏くんは立ち上がった。 「練習?何の?」 「ギターっす。ギター」 「へえ…さっきも言ってたね。浜辺でギター弾いてたって」 「そうなんすよ。毎日浜辺で練習してるんすよ」 「へえ…今日聴きに行っても良いかい?」 俺は何故か興味もないのに、聴きたいという衝動に駆られた。 なんでだろ? ギターどころか音楽すら触れたことがないのに。 聴くとしたら親父が聴いてるビートルズくらいだ。 「え?」 俺のいきなりの提案に奏くんは戸惑っているようだ。 「あっ、ごめん。嫌だった?」 無理にとは言わないしな。 ところが、俺の予想とは裏腹に奏くんは目をキラキラし始めた。 「マジすか?聴いてくれるんすか?やったあ!」 奏くんはぴょんぴょん跳ねて喜ぶ。 なんかこっちまで気分が良くなってくる。 「約束っすよ!今日の9時に浜辺で!じゃ!!」 「う、うん…」 そう言うと奏くんは駆け足で家を出ていった。
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