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先輩君に群がる女子達の中に、アヤちゃんの姿が見えない。真っ先に行くものと思ったんだけどな
キョロキョロと周りを見渡すと、みんなの輪から少し離れた所でオロオロしてる
手にはしっかりとタオルを握っている。フヨフヨ近づき様子を伺う
『どした?アヤちゃん』
「くぅ!出遅れたぁ」
『そうか、タオルを持って来るのに手間取ったんだね。よし、切り替えて先輩君の所に向かうんだ』
「うーん……」
だけどアヤちゃんは、尚もその場から動かない
というより一歩踏み出して、また戻ってを繰り返して、何だか見てる分には凄く面白い事になってる
『ちょいと、アヤさんや面白過ぎるよ。どったのさ』
「……あ、でも……うーん…もう遅いし、迷惑かな」
『乙女か!』
いや正に恋する乙女だけどさ……。確かに、もう幾つものタオルを先輩君は受け取ってる。出遅れたのは痛いかもしれん
けど
『迷う位なら、You行っちゃいなヨ!せっかくタオルも用意したんだからさっ』
俺っちの声は届かない。
幽霊歴がそこそこ長くても、悲しいかな、生きてる人間と話せるようにはならない
『それでもぉ!背中を押す位は出来るぅ!』
ユウくんの幽霊式奥義その1!
『ポルターガイストォォ!!』
説明しよう!〝ユウくんの幽霊式奥義〟とは、幽霊だからこそ出来る必殺技なのだ!(死なないけど)
そして、その1にあたる〝ポルターガイスト〟は物を触れずに動かせるのだ!
「え、何?ひゃあ!?」
具体的に言うと、タオルを引っ張り、彼女のジャージを押してやった。
急な出来事に、つんのめって一気に先輩君達との距離が縮まる
「っととと」
「藤村さん?」
「え?……あ。」
しかも、彼女の悲鳴で全員が振り向いていた
『ゼハー、ゼハー。アヤちゃん、ガンバレー……ゼハー、ゼハー』
応援するこっちは息も絶え絶えに、って息してないじゃーん……それは置いといて、ポルターガイスト使うと疲れるんだよね
パワーも今のが精一杯。と、俺っちの事よりアヤちゃんは
「あ、の……そのぅ。えっと」
絶賛テンパり中だった
そんなアヤちゃんの様子を見て、先輩君はクスッと笑みを洩らす
「ねぇ藤村さん」
「は、はひっ」
「そのタオルも借りていいかな?」
「も、もちろんですっ!どうぞっ!」
イケメンっすなー
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