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時刻は午後五時五十分、約束の時間まであと十五分だ。
予定通りであれば、五分後に到着する電車でレイミは天神駅のホームに降り立ち、そして午後六時ちょうどに改札から出てくるはずだ。
レイミは時間に関していえば、まるで自分自身が時計であるかのように、ほとんど正確に行動したし、間違っても遅刻をしてくるなどということはあり得ない。
あと少しの間、レイミがどのような服を着てやってくるのかを想像しながら待っていれば、レイミは改札の向こうからやってくるのだ。
僕は改札口近くの柱に凭れ掛かって、黙ったまま改札の内側の様子を眺めていた。
いろんな人が自動改札機に切符を通しては、改札の向こう側へと消えていき、そして代わりに何人もの人間が、改札の向こう側から出てきた。
だけどそこにいる人たちは、僕の知らない人ばかりだ。
あるいは、一人くらいは知っている人がいたのかもしれないが、相手も僕も気づかなかったわけだし、何よりも僕は、レイミが改札の向こう側から出てきてくれれば、それだけでいいのだ。
あとは、どんな人が改札の向こう側にいこうと、改札の向こう側から出てこようと、僕にとってはたいした意味もないのだ。
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