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レイミが僕に別れを切り出したとき、僕は彼女に言った。
「君は僕の光なんだ。どうしても手に入れたい光だ。そんな君の左手の薬指に、君にも負けないほどの光を放つ、あのダイヤモンドの指輪をどうしてもはめてあげたいんだ。僕は君を愛している。どうしようもなく愛しているんだ。考え直してはくれないだろうか?」
僕の言葉に対して、レイミは言った。
「ねえ、あなたは私のことを時間に正確だと言ったのを憶えている?」
「憶えているよ」
「どうして私がいつも時間通りに待ち合わせの場所に行っていたのか、あなたにわかる?」
「わからないな」
「簡単なことよ。早くあなたに会いたいという気持ちが私の中になかったの。それだけの魅力をあなたに感じていなかったの」
レイミの言葉に僕は何も言えなかった。
ただ、黙って涙を流すより他に、僕にできることは何もなかった。
そんな僕に、レイミは追い打ちをかけるかのように言った。
「私には好きな人がいるの。そして、その人と結婚することになったのよ。この間、あなたと一緒に見たあの指輪は、その人が私にくれた指輪と同じ指輪だったのよ」
僕はもはや、全てのことがどうだってよくなっていた。
ただ、それ以上何も言わずに電話を切り、ベッドの中でひたすら泣いた。
それでも、彼女は今でもなお僕の中にはっきりと存在していて、そのことが僕を苦しめることもしばしばだ。
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