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「10年後だったら、わからなかったねぇ。あんたもなかなかのもんだったけど、相手が悪かったね」
横たわる巨大な桃に向かって、婆さんは、そう声をかけた。
戦いを通じて、いつしか二人の間には友情が芽生えていた。
「いつでも相手になるよ」
婆さんは、そう言って親指を立てたが、二人が再戦する日は絶対に来ない。何故なら、桃は、この後真っ二つになる運命なのだから。
婆さんは、自分で言ったことを完全に忘れ、洗濯物もそのままに、桃を担いで家に帰った。
家では、役立たずの爺さんが、庭先で犬のポチと戯れていた。
「帰ったよ」
そう言うと、婆さんは、桃を爺さんの目の前に放り投げた。
「なんじゃこりゃ? これでも桃か?」
爺さんは、目を丸くして、ペタペタと桃を触った。
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