その男、マイロイドマスターになる

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マイロイドの貸与及びAMB社規律といった事務的な話しを終え、自分の『萌え』について熱く語り始めたDr .ランプとそれに合いの手をいれる彼女のマイロイドであるサラリを前にハイジんは二人に気づかれぬようにため息をついた。 この男、生来内向的である。 幼少の頃より皆の輪に加わらず一人でいることが多かった。 当然、心を許せる友は勿論人付き合いすら皆無。 浮き雲の如くフラフラと生きてきた為、家族とは疎遠で未だ独り身である。 先日AMB社を傘下に収める世界的大企業・M財団主催の宝くじで見事一等前後賞を獲得した。 それを契機に町外れにある廃屋を買い取り、慎ましく余生を過ごそうとしていた矢先のことでまさに寝耳に水である。 (…あの時のアンケートが原因かなぁ) 更に熱の入ったDr.ランプの話しを聞き流しながらハイジんはボンヤリ思った。 獲得賞金を受けとりにいった際のあの長いアンケート。 生年月日は勿論、個人的な趣味までおよそ百項目以上あった分厚いアンケートの束を律義に埋めていったのを思い出した。 営業スマイルを貼り付けた支店長をはじめとした銀行の職員達に囲まれ、居心地の悪かったこと…。 そういえば彼らから少し離れたところで控えていた黒服の男。 彼がAMB社のエージェントだったのだろうか? その日の内に自分の経歴を調べ上げることなど造作もないことだろうし、アンケートの結果から性格傾向も分析されたのだろう。 マイロイドマスターには向かないのはわかっているはず。 大方、預けたマイロイドに異常が発生しただの難癖をつけて莫大な違約金を取るつもりだろう。 面倒くさい 未だ延々と話し続ける彼女達には気の毒だがお引き取り願おう。 ハイジんは腰を上げた。
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