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しかしそれらがハイジんの頭を砕き、脳味噌をぶちまけることはなかった…
途中でスッポ抜けた二つの凶器・・・
スパナは大きく弧を描き、窓とは反対側にある戸棚を派手な音を立ててぶち壊し、レンチに至っては半分開かれた窓から空へと消えていったのだ・・・
未だ鬼のような形相で睨み付けているハカセ、騒ぎに気づき慌ててハカセの元へ駆け寄るサラリを後目にハイジんはタバコをふかしながら戸棚の残骸へと足を向けた。
かつてロシア人の豪商が住んでいたこの屋敷を買い取って以来、比較的綺麗だったこの部屋のソファーで寝泊まりしていただけで部屋の調度品には一切見向きもしなかったこの男にして珍しいことである。
突然の来訪者に家具を壊されたのなら普通の人間は怒り、嘆くのだろうが無気力無頓着なこのアラサー男はハカセを咎めることせず、その脇をすり抜け木材の山となった戸棚の前にしゃがみこんだ。
後ろでは何かを叫んでいるハカセとそれを諫めているサラリの声。
(・・・これは燃えるゴミでよかったかな?)
すでに来訪者達から目の前のゴミの山に興味が移ったハイジんはそんなことを考えながら、再びタバコをふかした。
チリチリと音をたてて落ちる萌えンスターの灰。
木片の合間から覗く鈍く光るガラスの破片。
そして濡れた床。
次の瞬間、音もたてずに蒼白い炎が戸棚の残骸もろともハイジんを包みこんだ。
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