甘露

3/51
前へ
/51ページ
次へ
「年取らないよね~。子供みたいで可愛いじゃん」 子供? ああ、そうか。 ほう、と一息ついて頭を掻いた。 一般論として(?)、あのひとが歳をとる毎に若返っているというのは有名な(?)話で。 「俺らなんか着実に老けてんのにね~」 同意を求めるように俺に向かって頬を膨らませる天然男は「羨ましい」を繰り返す。 精神年齢だけで言ったら、こいつもあまり歳をとってはいないと思うのだが。 「にしても」 「へ?」 肩を組んだまま、天然男に顔を覗き込まれ顎をひく。 「なんでそんな焦った顔してたの?」 「え!? 焦った? 気のせいだろ~」 バシバシと天然男の背中を叩いて否定、というか全力ですっとぼけた。 痛い痛いと喚く天然男を後に、ずんずん廊下を歩く。 なんだかモヤモヤする。 モヤモヤ? いや、キリキリする。 ちょっと前から感じ始めた感覚に首を傾げながら、本来の目的地だった筈のトイレの中へ。 「わっ」 「おい~っ」 バッタリと出くわしたのは、最近イメチェンを図った俺様男だった。 .
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

250人が本棚に入れています
本棚に追加