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準備、計画、段取り。
俺はこの言葉が好きだ。
なかなか思う通りにいかないが(特にあのひとに関して)。
「大丈夫みたい」
そんな俺にもパーフェクトな日は訪れるらしい。
「マジで!? 良かった~」
「ちょっと明日早いけどな」
今日の仕事が全部終わったのを見計らって声をかけたあのひとは、ちょっと考えてからマネージャーに聞きに行ってくれた。
本当はスケジュールは確認済みだったのだが、あのひとに自分の意思で「行く」と言って欲しかった。
行く、って、つまり俺の部屋にって事なんだけど。
既に時間は宵の口。
このタイミングでの誘いが、ただの食事とか飲みとか。
そんなものじゃない事くらい、きっとこのひとは気付いてる筈で。
さっき俺を見た眼が面白そうに…というか、しょうがねえなあ的な色を含んで優しかったのは見落とさなかった。
「腹減ってる?」
「ん~…、さっき軽くつまんだから平気」
他のメンバーを送り出したあとの楽屋で(もちろんスタッフやらマネージャーはまだそこにいる)。
「早く帰ろう」
カバンを持ったあのひとに並び、耳許に唇を寄せる。
ぱちくり。
デッカイ眼が二度、三度と瞬きを繰り返す。
それからちょっとだけ、その眼を細めると、口の端であのひとは笑った。
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