甘露

9/51
前へ
/51ページ
次へ
「だいたん~」 間延びした声と共に歩き出したあのひとについて楽屋を出て。 「車回してもらってるから」 逸る気持ちを抑えてエレベーターに乗って。 「何か飲み物あったっけ?」 「この前俺が飲んじゃってからは知んねーよ?」 会話の内容が、物凄く身近で。 「って、あなたそれ何日前だか分かってる!?」 「え~? いつだっけ」 はぐらかす顔が笑ってる事に安心したりして。 車窓の景色はいつもと同じ。 だけどさっきから、やたらとドキドキしてます。 ここまでは完璧だ。 つーか、ここまではよくあるパターンなのも確かだったりして。 忙しくてすれ違いとはいえ、レギュラー番組がある故に、必ず同じ仕事がある。 終われば何回かに一度位は飯も一緒にって事にもなって。 ただ、その後が問題。 必ず邪魔(メンバーやら疲労やら睡魔やら)が入っていたこの一ヶ月。 だが今日は違う(あのひとが)。 何が、って。 有り体に言えば“ヤル気"だ。 あのひと“も"今日はヤル気(に違いない)だ。 .
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

250人が本棚に入れています
本棚に追加