不釣り合いな居候

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ひとみは変わらず笑顔で頭に載っているカチューシャに手を当て、 「イメチェン! イメージチェンジだよ。ほら、二学期になったんだしね~」 ひとみと暮らし始めたのが夏休みの終わりで、それから二週間が経とうとしている。二学期はもう既に始まっていて、イメチェンするには中途半端だったが、きっと深い意味はないのだろう。 しかしだ、カチューシャか……グッジョブ! 淡いピンク色のカチューシャ一つで彼女の印象はさらに明るく、可愛く限界まで達していたと思われる可愛さのステータスはさらに上昇した。 カチューシャ属性という新たな世界が広がった気がした高校二年の秋だった。 「何もしなくてもお前は充分可愛いぞ」 ひとみとカチューシャはまさに鬼に金棒だった。犬や猿やキジを連れて退治しにきても、動物すべてが彼女の虜になりそうなほどに似合っていた。 柄にもなく面と向かって可愛いと言ってやったのに、ひとみの顔は自分が想像していたよりもずっと違った表情をしていた。 「もしかして似合ってない?」 今にも泣き出しそうな潤んだ瞳、若干震えたように感じた声で彼女は言った。褒めたつもりだったが、少し勘違いさせてしまったみたいだ。 いかにも不安混じりの顔でオレの目を見つめる。 くそっ、可愛すぎる! 親指を突き上げ、サムズアップする。 「そんなわけないだろ。オレの好みだから続けてくれ」 「えー、やっだよ~。これは期間限定なのです」 先ほどの表情が嘘だったかのようにころりと表情を変えて、今度はけらけらと笑う悪戯っ子のように笑った。 オレはこの顔が好きなんだな、とふと思ったのは内緒だ。
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