君の名前は。

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それから毎日雨が続き、俺は彼女には会えないまま。 会えないというか、会いに行ってもいないまま。 季節はどうやら、梅雨に入ってしまったらしい。 「あー……何で俺、こんなバイトにしちゃったかなぁ。」 溜息をはきつつ、店のカウンター机にうなだれる。 「幸村君。それ、僕の前で言わんでよ。」 店長は、俺の隣に同じくカウンターに身を預けて立っている。 「店長配達、行かないじゃないすか。」 「そうだけどもさ。」 雨の日は、彼女は来ないんじゃないかと、そんな気がした。 根拠も何もない、ただの勘だけども、そんな気がした。 人待ちじゃないって、言ってたしね。 とぅるるるるる。 「はい、ありがとうございます。こちらピッツァ〇村店、西村でございます。」 時給と、家からの近さを考えて、俺はピザの配達員のアルバイトをしている。 これがまた大変の何のって。 またムカつくことに、特に雨の日や台風の日に、多くの人は宅配ピザを食べる。 パーティーの時とかにしろよ。 俺は誓ったね。雨の日と台風の日と風が強い日は、宅配ピザは頼まないって。 「はい。はい、ありがとうございます。お時間50分ほど頂きますが、よろしかったでしょうか?」
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