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ある山の、ある空間。
少女の手には黒い槍が握られ、その手は震えていた。
「ありがとう。ようやく終わったんだ」
槍に貫かれた少年は少女にあまりにも優しすぎる言葉をかけた。
少年は持っていた剣を足元に落とし、少女を抱き締めるような形で刺されていた。
「……………」
少女は何も言えない。
その代わりに手に残る感触を何度も否定していた。
「これでこの世界は消えない。あいつらだって関わってこない」
少年は消えかかっている小さな灯火を振り絞るように言葉を発する。
最後にもう一度だけ。
「ありがとう、要」
少年の体から全ての力が抜けていく。
少女は少年と一緒に倒れ込んだ。
暗闇の奥で、眼鏡のレンズと白い髪が煌めいた。
「さぁ…ようやくイレギュラーは消えました。ここから再び、あなたには他の外史を生きてもらいましょう」
眼鏡の男が少女に近づいて、頭に手をかざす。
「要に何をする!!」
覇者の風格を纏う金髪の少女が叫んだ。
「簡単です。記憶を消し、新たな世界へ」
光がどこからともなく溢れ出す。
「さぁ…行きなさい。あなたが本来あるべき世界へ」
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