297人が本棚に入れています
本棚に追加
「死んだら月に何て言えばええねん。ウチが華雄見捨てて逃げました、とでも言えばええんか?ウチはそんなん嫌や、絶対何が何でも生き残るで」
「…逃げん。私はここに残る。お前が逃げる時間は稼いでやるからそれで…」
言いかけた華雄の肩を掴み、張遼は鋭い目で華雄を睨みつけた。
「もし、や。もしウチらが生き残れたら華雄だけおらへんねんで。月が喜ぶ訳無い、あんたの為だけに一生泣き続けるで月は」
華雄は掴まれた肩に震えを感じた。
張遼もまた、華雄に生きて欲しいと願っているのだろう。
だが華雄はその手をどけた。
あくまでも優しく。
そして城門の方へ降りて行った。
「…アホ。んな別れ方があるかい。死なせへん。絶対生き残ったる」
張遼は羽織りを翻して、華雄とは逆に城壁の上に上がって行った。
その手に偃月刀を携えて。
最初のコメントを投稿しよう!