一 虎

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しかし。 彼女達を見放さない者達もいた。 「あ?なんだお前ら?」 族達が騒ぎ出す。 女性達もそちらを向いた。 そこには美しく、そして気高い『虎』と、その群れがいた。 「喰らい尽くせ」 長たる虎が言うと、後ろにいた虎が得物を振りかざして斬りかかる。 突然の事態に族は浮き足立つ。 「う、うわあ!!」 「ひいぃ!!」 襲うことに慣れているが、襲われることには慣れていない。 あっという間にたった一人になった。 「て、てめぇら、お、俺達が誰か知ってんのかよ!?」 最後の悪あがきだ。 男は自分が身を置く勢力がどれだけのものか見せるように頭に巻いた黄色の布を握る。 「こ、黄巾党だ!!俺は黄巾党だ!!張角様が黙ってないぞ!!」 それを聞いた虎は笑った。 血にまみれた剣を手に、嘲笑うように。 「大いに結構。それで大将が出てくれれば、それを喰らって私が勝ちを得よう」 虎は笑うと、族の首を落とした。 辺りは血の海だった。
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