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女性達は怯えていた。
もしや新たな族ではないかと。
火が消えた平野は一瞬で暗くなった。
その中で、虎は一人の少女を呼ぶ。
「行け。私では怖がらせてしまう」
「わかりました」
少女は怯える女性達に駆け寄る。
女性達の中でも気丈な女性が一歩歩み出て、両腕を広げた。
「私はどうなってもいいから…!みんなを殺さないで!!」
勇気ある行動だが、足は震え、目は恐怖のあまり閉じていた。
だが後ろには守るべき人がいる。
一歩だって退けない。
彼女からはそんな意志が伝わってきた。
少女はその女性の前に座り、女性を抱き寄せた。
「大丈夫。私達はあなた達を助けに来たんです。村の人達に話は聞きました。苦しんでる人がわからなくなるほど、私達は獣じみてはいません」
笑顔だった。
あれだけの一方的な戦いを演じた戦士とは思うことができないほど、無垢な笑顔。
女性の目に涙が溢れた。
「…ありがとう」
「私達はあなた達を助けるために戦います。だから、当たり前のことです」
その少女の笑顔はまるで空から舞い降りた天女のようだった。
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