20人が本棚に入れています
本棚に追加
呼吸を整えるため身を屈んでいた私はすっかり安心感に浸っていた
だけどその安心感を壊すような
ドスのきいた男性の声が私の頭の上から降ってきた
「おい。ちゃんとこっちを見ろよ」
背中に冷たい汗が流れゆっくりと上半身を戻した
声の主でもある男性の風貌は
丸坊主で両耳、唇には2本ずつのピアスが光り
目つきは悪くいかにも裏社会で生きている人のようだ
「お前の靴が俺の足に当たったんだよ。謝れ」
「すみません」
「声が小さいんだよ。本気で謝ってんのか」
どこまでこの人は心が狭いの?
本当に当たったかだって分かんないし
しかも電車の中でわざわざ絡んでくる問題ではない
他の乗客は寝ていたり携帯を操作したりと無関心を装っていた
だが耳ではきっと私達の様子を聞いている
誰も助けようとは思っていないらしい
ピロピロ~♪
突然男のスーツの胸ポケットから携帯の電話音が
男は携帯をとりだし
「何だ」
『・・・』
「くそっ。分かった今行く。
そこを退けあま。お前と話してる暇はねぇ」
二言くらい電話で話し彼は私を退かし開いていたドアからでていった
「あぁムカつく」
・・・もう嫌だ
窓に写る自分の疲れ切った姿
そんな私を見つめる視線があった
黒のフードを被った男性
人の目を気にする余裕は
私には無かった
最初のコメントを投稿しよう!