小さな悪夢の始まり

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人質になってしまった 一人の銀行員の女性がお金を詰めるのに動いている以外 私を含めた約30人はフロアの中央で手を挙げたまま 冷たい床で座らされている 子供の泣き声や女性の怯える声がこの場の緊張感を更に高めていた その空気を作り出した犯人は 先程から窓を覗いたり出口や裏口に行ったりと 明らかに挙動不審だ それに帽子を深く被っているだけで素顔はバッチリ見えている 仲間の姿も確認できない 計画的犯行にしては単純過ぎるし欠点がたくさんある だとしたらこの犯人はそこまで悪い人間では無いのかもしれない 「おい静かにしろ。殺されたいのか」 「貴方が怖いから怯えているのに無理を言うなよ」 ハッ つい心の声を言ってしまった 「おいお前。今何て言った」 ヤバイ 聞こえてたみたい ここで大人しくしなよ私 今更、後悔してきた しかし犯人は私の前まで近づいてきた 「お前だよ。立て」 この状況では従うしかない 私は無言で立ちがった 正座をしていたので足が痺れたが踏ん張って我慢した 「俺に文句があるのか」 ありますよの言葉は喉で飲み込んだ 同じ失敗は繰り返したくない 「無いです」 変に犯人を煽って暴れられても困る ならば嘘を言って相手の流れに乗ろう 「嘘だ。俺はさっき聞いたぞ。お前が俺の悪口を言ったのを」 悪口だったのかな もし悪口だとしても 良い大人がそれぐらいで 「言ってません。空耳です」 棒読みでもいっか 何か面倒くさくなってきたし 「空耳じゃない。俺の耳を馬鹿にすんのか。 お前みたいな幼いやつにまで俺は・・・」 プチッ 頭の中のある血管がカッコイイ音を出しながら切れた
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