小さな悪夢の始まり

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「俺は見放されたんだ。 これをやんなきゃ俺はもう生きられない。 俺だって強盗なんてしたくはなかった」 スイッチが入ったように彼は弱音を吐き始めた 最初に出会った口の悪い人と同一とは考えられなかった 「あのそれなら自首したらどうですか?。 罪はもう消せませんが軽くなりますし。 それと人質の解放も」 「金と・・・が用意すれば人質は解放する。 自首は無駄だ」 途中聞き取れにくい所があったが 自分の安全が保障されたので一安心だ 私達の話を聞いていた 客や銀行員も私のように安堵をしたのを背中で感じた でもどうしても彼の強盗には裏がありそうな気がする 第三者が居てそいつが今回の事件を起こし、罪を彼にきせた テレビの見すぎかな 「すみません。用意が出来ました」 声の方には体を細かく震わせ 手には黒い大きなバックを持った 若い女性銀行員の姿が 「よしそこに置け」 「はい」 指定した場所に彼は歩き出した 帽子から覗く彼の表情はひどく寂しそうだった 体格も痩せ細く顔の頬も皮膚が垂れて病人のようだ 「貴方が本当の悪人には見えません」 同情からか私はそう言っていた 「人間は最初から悪人なんかじゃねぇよ。 ならされるんだ。お嬢さん。 幼いって言って悪かったな。 あんたは綺麗な女だよ。 おい。俺が出て5分経ったら逃げろ。 良いな。」 私はただ彼の後ろ姿を見ていた 彼が裏口から消えていくのと同時に 人々は出口から逃げて行った 腕時計を見ると今までの出来事が たったの数分しか経っていない事に驚くと共に結局 自分はやると意気込んだが 結果を見れば何も変わらなかった 私って中途半端だ 手をつけられていない鞄と携帯の山から 自分の物を見つけ私も人々の後を追った 誰も犯罪者の約束を守る人はいなかった
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