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大富豪で有名な富田さん。正確に言うと、その父が有名な政治家だった。
専用の部屋があるほど、ゲーム、ギャンブルなどの類が大好と噂の人物。一日の三分の二をゲームに費やしてると言われている。
羨ましいこの上ない。
そんな富田さんから依頼の電話があったのは早朝。俺の心地良い眠りを妨げやがて。
内容も言わず“報酬は大金。早く来い”との事。それだけ伝えると一方的に切られた。
準備を高速で済ませ、渋々ながら重い足取りで辿り着く。
遙か彼方からでも認識できるほどの豪邸。まるで、御伽噺(おとぎばなし)に出てくるような―――そんな周りとは異質の家だった。
門にたどり着くと、庭にはたくさんの人。場違いな待遇だな。
左にはスーツを着た執事。右にはメイド服を着たメイド。まるで道を作るように縦に並んでいる。
その道の終極。扉の目前には依頼人の富田さんが待ち構えていた。
高価だと、いかにも象徴しているようなキラキラした服。首に掛けた真珠のネックレス。金の無駄使いの最先端と言わんばかりの身なりだった。
真珠が登り始めた太陽で煌めく。あのネックレスの真珠一個くらい貰えないだろうか。
そんな陽気な気持ちで富田さんの元へと歩を進める。だが――そう、甘くは無かった。
常識も、一般も、通常も―――
そんな“普通”を全て覆すような言葉が耳に飛び込んできた。
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