日常

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「今すぐライオンを捕まえろ」 言葉を発する間もなく訪れる強襲。恐ろしい。 逃走する時間も待避する時間も与えられることなく俺は執事の塊に捕縛された。 四肢を掴まれ、体が浮き、視界が映り変わる。依頼している立場を一切無視した行動。突如すぎる事態に怒りすら沸かない。 呆然とする。頭の中が無なのが分かる。 なんだこれ‥‥。浮かぶのはそんな言葉ばかり。 やがて我に返る。初めに行うのは空間把握。 考えろ。今の状況を。 扉は開かない。誰かが逆方向から力を加えてやがる。 扉からの脱出を諦め、視線を扉からリビングに移動した時―――瞳に人影が映った。 紛れもなく富田さん。 景色の一部のように開いた窓から顔を覗かせ俺を見据える。いっそのこと勢いよく閉めてやりたいぐらいだ。 窓から覗かせる双眼は年に似合わないほど輝いている。まるで真珠のように。 伸びた顎髭を撫で、口を開く。 危ないから窓から見学すると。誰が開いた窓が安全だと言った。 危険極まりない行動を自分の好奇心の示すがまま行う。子供か!と叫ぶことが出来たらさぞかし気分爽快だろうに。
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