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真っ直ぐ垂直に振り下ろした刀はライオンの爪によって防がれる。
重い一撃。手が痺れ握力が無くなってくる。
それでも―――負けられない。
たとえ無力でも。たとえ絶望の淵にいたとしても。たとえ希望の光が見えなかったとしても。
諦めることはしたくない。
柄を握り直し、強く握る。
力を込め直すが、一度止まった刀では押し返すことが出来ず戦況は硬直したまま変わらない。
手を打たなければ、このままでは敗色濃厚。
均衡を解くか。いや、でも後ろはない。
背後には、約一歩分のスペース。それより後ろには窓や花瓶や富田さん。早く逃げろよ。
思考を巡らす。頭を働かす。集中する。
そして―――最善の策を導き出す。
刀で敵の爪をいなす。そのまま、後ろにある花瓶を手に取り―――
「ルールその3。家の物を壊すと報酬没収」
元に戻す。作戦破棄だ。
全てを壊す男――富田さんの言葉によって。自分の頭も壊れてやがる。
敵。仲間。そう聞かれると言葉に詰まる。
ライオンの注意を引きながら裏手に回り込む。狭いところじゃ、力で勝てない以上不利だ。
壁から離れ中央付近に躍り出る。もう、大丈夫だ。
「行け行け~!」
そんな言葉を後目に俺は強く地面を蹴った。
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