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―――――――
時は少し経った頃。家の前の草原に立ち尽くす。
そんな俺に相対するのは1人の男。いや、青年か。
服装に瞳と髪そして手袋、それに付け加え靴まで全てが真っ黒な青年。
そんな青年に口を開く。
「お前誰だ」
「アハッ!いきなり厳しいね」
まるで少年のような口調。富田さんに負けないほど俺の頭に血を上らせる。
「もう一度言う。何者だ」
「君に用があるものかな!」
進まない展開。そんな現状が怒りを齎(もたら)す。
求めている事と違うことを返答して来る青年。聞き方を変えるか。
「名を名乗れ」
「葉咲 颯真だよ!」
語尾を上げ可愛らしく答える。そんな口調が苛つかせ判断力を鈍らせる。
葉咲 颯真(はざき そうま)。
もう一度心中で復唱するが、一切知らない。
「で、何の用だ」
ニコリと青年が微笑んだ。微笑むくらいなら、答えろ。
分からない。意図も目的も何もかも。
でも何なんだ。この感覚。笑顔の裏に隠された本性。それが伝わる。
久々に感じる。この感覚は他と違う。
こいつは―――危険だ。
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