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本当に熟(つくづく)腹が立つ。言葉、口調、笑み。何もかもが俺の勘に障る。
こいつが弱ければ自分から攻撃を仕掛け一瞬でねじ伏せていただろうに。
巧みな言葉が動揺を呼び起こす。手を読まれてる。思考を阻まれてる。
自分から切り出す方がよっぽど情報を奪いやすかった。
相手から切り出されたら―――“本当”の情報は奪えない。
それは“奪う”じゃなくて“教えてもらう”だから。
厄介だ。久々に感じる死の感覚。危険信号は未だ止まることなく脳に鳴り響く。
先を促そう。そう考え口を開く。
「条件はなんだ」
「さっすが!話が分かるね!」
「お前の性格的にな」
褒め言葉さえ中傷に感じるんだから不思議だ。
隠されてる。奪えない。はぐらかされている。
きっとこいつはメリット無しに情報は与えない。重要点は全て流される。こいつの存在自体が冗談であるような。
俺の言葉に――性格を読まれていることにすら微塵も動揺しない。
ただ、なるほど!と返事するだけだった。
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