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「そっか。じゃあ琉希君の人生はここで終わりだね!」
途端に溢れ出す殺気。そうだ。忘れるところだった。
こいつに―――常識なんて通用しない。
普通も、当たり前もこいつの前では無意味。こいつはそう言う男だ。
言いようのない独特の雰囲気が醸し出される。見るだけで気分を損ねそうだ。
戦意損失。そんな言葉が頭に浮かぶほどの殺気。それは予想を凌駕し、考えを狂わせる。
負ける。勝てない。死ぬ。
悲観的になる精神を立て直そうとするが、浮かぶ言葉は全て負の言葉のみ。
そんな中で唯一浮かんだのは京香の顔だった。
そうだよな。何を迷ってるんだ。何を怯えてるんだ。
敗北と言う結果の見えた戦い。
それでも―――諦めるわけにはいかない。
守るべきものがある限り。
静かな庭の中央で、俺は戦意を剥き出しにして刀を構える。
それに対し青年は瞳にだけ戦意を灯し、未だに棒立ちのまま。
敵の思惑通りにはさせない。迂闊に近づくのは死を意味する。
集中。無闇に接近するのを避け待つ。
タイミングを。隙を。チャンスを。
静寂は消えることなく保たれる。だが、緊迫した状況も後僅か。
突如庭に響く、金属のような扉が開かれた音。
俺は―――駆け出した。
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