始まりはいつも理不尽

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刀を振るう回転を利用。軸を意識し回し蹴りを放つ。 全身全霊。全力を込めた一撃。ただ、ひたすら“威力”を追求した回し蹴り。 大振りで自身の体が完全に無防備になる。だが―――宙にいるこいつに術はない。 回避する術も。俺に攻撃する術も。 「う゛っ」 初めて見せる歪んだ表情。それは、勝利に近づいた唯一の証。 大丈夫。いくらこいつが“化け物”であろうとも人間だ。 蹴りを阻む物は無く、綺麗に葉咲の腹に直撃する。 空中で攻撃したためか、飛距離が伸び、林の根元まで吹き飛んだ。 激突音。木が揺れたことにより葉が数枚舞い落ちる。 まだだ。もう一撃。 葉が地面に着くよりも速く。葉咲が立ち上がるよりも早く。 ―――俺は駆け出した。 追撃を開始する。ここへ来て敵の油断が俺を救った。 実力で劣る敵への勝利方法は二つ。 弱点を狙うか油断している内に仕留めるか。 弱点。探すだけでも骨が折れそうだ。 でも―――もう、その必要はない。 後は俺が刀を振るえば、終わりだから。 必ず―――決める。 敵へと距離を詰めながら、刀を鞘に収める。そして、敵との間合いを一瞬で詰めた。
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