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「あははっ!怖いねー」
「なっ!?」
全力で刀を振るった俺から出たのは疑問の声。
容赦は無い。情けをかけたつもりも毛頭もない。
本当に―――殺すつもりだった。
腕も体も肉も骨も何もかもを―――切り裂くつもりだった。
だが、結果は予想を裏切る。
―――俺の刀は制止していた。
発せられる金属音は俺の聴覚を刺激する。視界は一点に集まったことにより狭まり目を奪われる。
迂闊だった。そんな簡単な言葉では片付けられないほどの失態。
俺は気づけただろうか。刹那の時間で思考する。
慎重に真剣に全力で事を運んでいた。だけど気づけない。見た目に囚われ、完全にその“可能性”を捨てていた。
手袋が武器。有り得ない。そう思い込み無意識の内に切り捨てた可能性。
交差された葉咲の手中には俺の刀が握られている。
音から推測し、材質は金属。だが刀を握ってる所を見ると、かなり柔軟に動かせる材質とも言える。
いや、それだけじゃない。衝撃吸収。そんな金属聞いたことは無いが間違いなく取り付けられているはずだ。
尚も余裕の表情。その笑みが一際俺に恐怖を感じ取らせる。
「くそっ!」
動かない。余裕綽々の表情で俺の込めた力に対抗してくる。押し返すのは無理か。
選択肢を頭に浮かばせる。浮かんだ選択肢は二つ。
刀から一度手を離し、素手で追撃を開始するか。そのまま諦めず力で押し返すか。
そんな時、葉咲の言葉が俺の鼓膜を刺激した。
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