始まりはいつも理不尽

20/37

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/78ページ
「琉希君はやっぱりこの世界から消えるかな!でも―――」 名前を呼ぶな。口を開くな。笑顔を見せるな。 自身で気づいていた気持ち。真実を知りたいのに、こいつが口を開くたびに苛立ちが増す。 俺は―――怖いんだ。真実を知るのが。 生まれる恐怖を無理やり苛立ちに変換し、戦う糧にしている。 だけど、俺は最初から“こいつ”に脅えていたんだ。 再び消える、音と言う存在。まるで、音ですらこいつに支配されてるかのように。 草木の揺れる音も。 風の音も。 呼吸の音も。 心臓の音も。 全ての音が不鮮明で。 鳴っている事すら曖昧な状況の中、葉咲の声だけは―――― 「生きるチャンスを与えよう」 鮮明に俺の鼓膜を刺激した。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加