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「琉希君はやっぱりこの世界から消えるかな!でも―――」
名前を呼ぶな。口を開くな。笑顔を見せるな。
自身で気づいていた気持ち。真実を知りたいのに、こいつが口を開くたびに苛立ちが増す。
俺は―――怖いんだ。真実を知るのが。
生まれる恐怖を無理やり苛立ちに変換し、戦う糧にしている。
だけど、俺は最初から“こいつ”に脅えていたんだ。
再び消える、音と言う存在。まるで、音ですらこいつに支配されてるかのように。
草木の揺れる音も。
風の音も。
呼吸の音も。
心臓の音も。
全ての音が不鮮明で。
鳴っている事すら曖昧な状況の中、葉咲の声だけは――――
「生きるチャンスを与えよう」
鮮明に俺の鼓膜を刺激した。
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