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足が宙に浮き、吹き飛ばされたと認識するまでの時間は刹那の時間。
「ちっ!」
地面に打ち付けられた体を即座に起き上がらせ、敵に視線を向ける。
視線の先。葉咲が回し蹴りの体制で俺を見据えている。
「あくまで僕は敵なんだ。油断し過ぎだよ」
頬を緩ませ満面の笑みを見せそう漏らす。
油断していた。惑わされていた。
こいつは―――敵。何を迷っている。何を戸惑っている。
再び、瞳に気迫を灯し葉咲を見据える。
揺るぎない覚悟を添えて。
「あはっ!僕を殺したら琉希君も死ぬよ?その彼女さんもね」
「お前を殺さなくても俺たちはこの世界から消える」
御託はいらない。こいつの言葉は俺の刀を止める材料にしかならない。
耳を傾けるな。そう自身に言い聞かすも、まるで命令に背くように聴覚は葉咲の言葉を容易く受け入れる。
「だけど、命は助かるよ!」
二度目。まるで忠告のように俺に語りかける。
真実。虚実。それすらも不明。分かることはこいつの話が俺の動きを鈍らせてるという事。
この世界からは消えるのに、命は助かる。
こいつは何を知っているんだ。何を隠しているんだ。
全てが理解できない。そんな俺に返事する言葉は持ち合わせて無かった。
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